






■エスプリ珈琲店
喫茶店で創業30余年と言えば老舗の部類ではなかろうか。
1850年代パリのCafe空間の再現が焙煎師であるオーナーの切望するところ。街路に長く接する敷地形状に対してファサードを三つのボリュームに分割、真ん中を半戸外空間のごとく扱い、鉄製のサッシュはH型鋼と角コラムの組み合わせで構成した。
テラスの石は島根県産の荒島石、作庭家福田義勝氏の労作。
(岡山県岡山市 1999)
■Carapan
表町3丁目の商店街に面したイタリア料理店、シェフのおじいさんが昭和28年からスポーツ用品店を営んだ店舗を改装。
間口の狭さと奥行の長さを効果的に扱うために手前を暗く、店舗のなかほどにはトップライト、奥には庭を設けた。若いシェフの料理にかける真摯な思いを受け止めるにテーブルを舞台と捉え、そこに意識を集中させるインテリア・照明計画を心がけた。
(岡山県岡山市 2001)
■Hair Entrance
美容室の優秀さは顧客のリピート率と年代層で測るそうだ。そういうデータ解析によるとこの店は白眉。ご贔屓さまが心地よい時間を過ごしてくださればよい、特段新奇なデザインを競う必要もないとのオーナーの言葉を建築的に成就していった。
シャンプーゾーンとエステ・着付けゾーンから其々に眺められる庭を設け、寛いだ気分になるように計画した。
(岡山県倉敷市 2004)
■自由空間DON
4間×4間の広さに1間幅で2F観客席を設け、厨房棟は別棟として計画した。片流れの屋根の内部はそのまま勾配天井になっていて、大きな開口部の先に見えるものは牛窓の海。
4間の柱無空間を支えるのは現場製作の木製アーチ梁とSUS鋼のテンション材。海から吹き付けるおそろしく強い風と対峙している。
オーナーは鈍工房の篠田氏と窪田氏(『かあさんの歌』の作詞・作曲者)。
(岡山県瀬戸内市 2002)
■玄米食堂楽土館
自由空間DONの立つ丘より一段下がったところに計画された食堂で、窓の向こうは牛窓の海、その手前には牧草地が広がる。限られた敷地を有効に使うために北面の壁は擁壁で兼用している。
また限られた予算を有効に使うため、構造は2×4壁式工法とし、耐力壁を構成する針葉樹合板をそのまま現わし、仕上材として扱っている。
(岡山県瀬戸内市 2003)
■Bar北田
Bar範疇におけるauthenticとは正統・本物な…という意味だが、この店はそこに分類される。
オーナーの北田氏は設計当時25歳、酒に関する深い知識もさりながら、空間の本質をJapanese public spaceと捉える慧眼の持ち主。インテリアのすべてはそのことの成就するために計画されている。特にグラス棚の内部照明と扉金物の施工精度は密かに誇るところである。
(岡山県岡山市 2005)
■K-9 in the life
屋号のとおり、人生における犬 つまり人と犬の関係をトータルにサポートする拠点である。犬の美容室にありがちな臭いや鳴き声は皆無、ドッグカフェでは犬にも人間にも美味しいメニューを提供。オーナーは教士ハンドラーの資格を持ち、トリマー養成スクールも経営。
内実のクオリティーの高さを建築的に表現した結果、ブティックかカフェと思い定めてアプローチする人も多いという。
(岡山県岡山市 2006)
■吉備土手下麦酒
醸造所
「町の豆腐屋のようにツッカケ履きで寄る醸造所」というのがオーナーのコンセプトだった。
出来立ての麦酒を試飲するために設けられたデッキとロフトから旭川が見える。名に違わず吉備の土手の下に建っている。
間口2間×奥行き4間の2階建、黒い杉板は西日本で一般的な焼杉板ではなく、オーナーの好みで関東・東北風の塗杉板。
(岡山県岡山市 2007)
■食工房 てん
ちゃんとした食材でちゃんとした料理を提供したいというオーナーの夢をかなえた空間。物件契約から開店までスピーディ。それを可能にするのはオーナーの真摯さが
たがうことなく設計者のそれと合い呼応する、まさに阿吽の呼吸。
わずか一年半で店主の都合で寿閉店、「閉店日に
竣工写真を撮る珍しい設計者」と揶揄されながらでも在りし日の姿をカメラに納められたことは僥倖であった。
(岡山県岡山市 2008)
■草野歯科
建物自体は平成元年竣工
歯科医であった亡き父君の遺産、「歯科医にならなかったら建築家になりたかった」という父君が自らスケッチし
思考を重ねた院内の動線、インテリアは今でも
十分通用するものだった。
そこで今回の「継承」改装では残された良きものの良さを再発現する、いわばシームレス(=継ぎ目のない)な改装を心がけた。アプローチからエントランスにかけて新たに植栽を施した。設計時に生後半年だった三代目が歯科医になるかどうかは未詳だが、シンブルツリーとして彼の名と同じ呼び名を持つ木を植えた。
(岡山県岡山市 2010)
■パール
デンタルクリニック
「欧米では一般的な予防のための定期通院を普及したい」というドクターの意志を受けて、白く透明感のあるカフェのような空間作りを目指した。受付カウンターは、几帳面な直線でもなく完璧な円でもなく、矛盾をも引き受けてくれそうな寛大な楕円形を採用。万事たおやかに優しげに包み込むようなインテリア計画とした。
(岡山県倉敷市 2003)
■小規模多機能施設
きっさこ
一日の大半を過ごし、時には宿泊する、こういった施設は利用者にとって家のようなものでありたい。南面に大きな開口部を持つデイルームには陽光が降り注ぐ。ハイサイドライトからの光を天井面の水平木製格子で撓めてから配光している。長い廊下の終端には小さな庭を設けた。柔らかい光に守られて歩いてゆく先は花咲くところ、そんな寓意を込めた。
(岡山県岡山市 2008)
■福神トシモリ薬局
安売り量販の対極にある「カフェのような」薬局を作りたいというオーナーの希望を受けて五角形の平面を持つ漢方薬局を改修。
物販ゾーンを稼働率・利益率の低い順に大胆に減らした。日用品物販を最低限残したのはオーナーの情断。手押し車にすがってやって来るおばあちゃんのために。
中央の大テーブルはひょうたん型、正面切って話せぬことからポツリポツリと会話が始まる。
(岡山県岡山市 2003)